扉というものは、いったい出てゆくためにあるのか、それとも入ってくるためのものか、考え出すと宮坂四郎には、それがただ一枚の板戸ではなく、ひどく堅固な鋼鉄とか岩のように思えてくるのだった。

                           ——中井英夫『とらんぷ譚』「扉の彼方には」より